2024年1月2日の海上保安庁機とJAL機の衝突事故は、社会に大きな衝撃を与え、航空の安全について改めて考えさせられました。また乗客全員を脱出させた客室乗務員の行動は称賛されました。
この事故で客室乗務員の保安任務が、社会的に注目されたことから、私たちがこれまで要求してきた、①ドア数に満たない客室乗務員編成数の増、②保安要員としての位置づけを明確にする客室乗務員のライセンス制について、国に対する「請願書名」として取り組んでいくことを決めました。オンラインでの署名もできます。
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■ボーイング787など客室乗務員編成増を
今回の事故はA350型機で、8つのドア全てに客室乗務員が配置されていたことにより、客室乗務員は即座に脱出に使うドア、使用せず開けてはならないドアを適切に判断することにつながりました。しかし、ボーイング787型機などは、ドア数以下の客室乗務員編成で運航されています。私たちは、各ドアに1名以上の客室乗務員を配置することを求めています。
フロアレベル各ドアへの客室乗務員配置はICAOが推奨
世界の航空会社の安全運航のための基準を作る国際民間航空機関(ICAO)のホームページ、Cabin Safetyのページに「最少客室乗務員数」に関する記述が載っています(HPリン
現在、航空機タイプごとの客室乗務員の必要最低人数はその航空会社の所属する国が決めますが、その際に「緊急脱出の際に客室乗務員が対応できるよう、フロアレベルのドアに客室乗務員を配置すべき」だと主張しています。
そしてICAOは、国が最低必要数を決めるにあたってのガイダンス資料として、2017年にマニュアル(Doc10072)を作成したことを紹介しています。
このマニュアルは有料ですが、入手してみるとフロアレベルドアに客室乗務員を配置すべき根拠が記されていました。
過去の事故例の分析・メーカーも推奨するドア数配置
ICAO Doc10072『客室乗務員の最低必要人数の設定に関するマニュアル』には、過去の事故事例と、2006年にエアバス社が発行したフライト・オペレーション・ブリーフィング・ノートに「使用不可能な出口を担当する客室乗務員は、その出口が使用不可能であることを乗客に伝え、最も近い使用可能な出口に誘導しなければならない」「客室乗務員は、出口が使用されないように出口を警備しなければならない」と記してあることを紹介し、フロアレベルの各ドアに1名の客室乗務員を配置する必要があるとしています。
一人の客室乗務員が2つのドアを担当する場合の業務
機種ごとの客室乗務員必要最低人数を国が認可するにあたって、航空会社がフロアレベルドア数以下の客室乗務員数を希望する場合は、一対のフロアレベルドアを一人で担当し、安全レベルを維持できていることを国に示す必要があるとしています。
そしてマニュアルには、具体的に一人で実施すべき業務が書かれています。
a) 両方の出口で乗客の流れを管理する;
b) 両出口で機内持ち込み手荷物を管理する;
c) 両出口で継続的な出口の使用可能性を監視;
d) 両方の出口で、適切で聞き取りやすい命令を叫ぶ;
e) 無力な乗組員の職務を管理する;
f) 乗客を他の使用可能な出口に誘導する。
g) 乗客が使えない出口を開けるのを防ぐ。
2つのドアに関して、この内容を一人でできるとは思えません。ICAOが、各ドアに1名の客室乗務員を配置すべきと言うのも当然です。
日本の航空局はICAOマニュアルを守ってる?
日本の航空局が客室乗務員の編成数を認可するときの基準を定める『運航規程審査要領細則』を見ると、客室乗務員の編成数について「航空機の型式毎に、航空機の運用限界、客席数又は搭乗旅客数、非常脱出口の数及び位置、救急用具、緊急脱出のための機内設備の取扱い及び緊急時の業務分担を考慮」と、ドア数と緊急時の業務分担を考慮して決めるように書いてあります。
しかし現状は、ボーイング787型機などドア数以下の編成数を認めており、「業務分担」の内容について、ICAOマニュアルと同レベルのものを求めているのか、大いに疑問を感じます。
■空の安全向上へ客室乗務員にライセンスを
日本の航空会社の客室乗務員は、入社時に保安要員としての初期訓練を受けて客室乗務員となり、さらに年に1回その知識と実技能力を維持するための定期訓練を受けています。航空会社は、これらの訓練に合格した者に客室乗務員としての乗務資格を与えています。
これらの訓練内容は航空局(国)が認可、客室乗務員が筆記および実地審査に合格していることを確認し、利用者がどの航空会社にも安心して乗れる仕組みを築いています。
私たちは、現状国がきちんと管理していることを踏まえ、航空会社に代わって、客室乗務員に対するライセンスを発行すれば、保安要員としての客室乗務員の地位の確立、意識の向上につながり、空の安全の向上につながっていくと考えています。
世界の国々は客室乗務員ライセンス制が主流
世界の航空会社に安心して乗れるように、ICAOは「客室乗務員の訓練内容」を定めています。それをもとに各国が自国の航空会社に実施させることで、客室乗務員は保安要員としての任務を果たす能力を持ち、利用者はどの航空会社にも安心して乗れる仕組みとなっています。
国際民間航空条約加盟国(193ヵ国)では、ICAOマニュアルに定められた訓練・試験に合格した客室乗務員に対し、保安要員として国家が資格を与えている国が多くなっています。
私たちが調べた中では、アメリカ、EU諸国、イギリス、南米の全ての国、エジプト、トルコ、中東各国、タイ、中国、モンゴルなどがライセンスを与えています。
国際民間航空条約加盟国の客室乗務員は、同じ基準の下で訓練を受けており、保安要員としてほぼ同じレベルの知識・能力があります。世界の主流、グローバルスタンダードはライセンス制なのですから、日本も客室乗務員のライセンス制を導入すべきです。
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