1.事件の概要
ANAで長年働いてきた客室乗務員Tさん(2021年12月定年退職)が、健康不安を感じる職場実態の改善、特に長時間労働にも拘らず休憩がない問題の改善について、当時所属していた企業内組合のANA労組に相談してもまったく取り組まないため、客室乗務員の合同労組ジャパンキャビンクルーユニオン(JCU)に加入した。
客室乗務員は、労基法34条の休憩は適用除外とされるものの、近距離国際線・国内線乗務で勤務時間6時間を超える場合は、労基法施行規則32条2項(みなし休憩、法解説は別紙参照)が適用されることから、勤務中のみなし休憩(レスト)を要求して団交を申し入れた。
ANAは要求に対し「労基法施行規則32条2項を遵守し、適切な運用を行っている」と回答したが、職場では6時間以上の勤務中ほとんど休める時間がない中で、なぜ法を遵守し適切な運用を行っていると言えるのかと、JCUが4回行った団交で質問したことに対し一切答えなかった。
回答の根拠を聞いても説明しなければ議論は進展せず、組合の宣伝・組織拡大運動を妨害する意図を持った、不誠実団交(不当労働行為)であるとして、JCUは2021年12月17日、東京都労働委員会に救済申し立てを行った。
1年8カ月の審理を経て2023年8月21日に結審し、2024年9月2日不当労働行為救済命令が交付された。
2.不当労働行為救済命令の内容
事件番号:令和3年不第95号事件
【主文】
1 被申立人全日本空輸株式会社は、申立人ジャパンキャビンクルーユニオンが令和3年4月15日付けで申し入れた、近距離国際線及び国内線にて乗務する客室乗務員と組合員の休憩を議題とする団体交渉について、自らの主張を裏付ける具体的な根拠を示すなどして、誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の羽田空港及び伊丹空港にある客室乗務員更衣室付近の従業員が見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年 月 日 ジャパンキャビンクルーユニオン 中央執行委員長 木谷 憲子 殿 全日本空輸株式会社 代表取締役 井上 慎一 令和3年6月29日、7月28日、8月26日及び10月15日に行われた近距離国際線及び国内線にて乗務する客室乗務員の休憩を議題とする団体交渉における当社の対応は、東京労働委員会において不当労働行為であると認定されました。 今後このような行為を繰り返さないよう留意します。 (注:年月日は、文書を交付した日を記載すること。) |
3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
以上
Commentaires